下町の小さな定食屋「潮屋」を、両親亡きあと一人で切り盛りする湊。台所の火だけが友達みたいな、平凡で堅気な毎日。ある土砂降りの夜、閉店間際の暖簾をくぐって、腹を刺された血まみれの大男が倒れ込んできた。堅気の常識なら通報一択だ。でも——母(元看護師)に手当てを仕込まれた俺の手は、勝手に動いていた。「うちの暖簾をくぐった客は、誰だろうと死なせない」。男の名は九鬼蓮。裏社会で「羅刹」と恐れられる、桐生會の若頭だった。回復した男は、なぜか堅気の俺の台所に居着いて離れない。冷酷なはずのその男は、俺にだけ、不器用なほど甘い。「十年前、お前は俺を救った。今度は、俺がお前を守る番だ」。やがて組の裏切りと抗争が、下町の俺の店にまで手を伸ばす。堅気に戻れと言いながら逃がしてくれないこの男は——十年前から、俺だけを見ていたらしい。ヤクザ×堅気の格差×重執着溺愛、現代任侠BL長編。シリーズ第1巻・全10章完結。

