潰れかけた流れの小一座「つづれ座」の下働き――命じられた通りに人形を動かせず、いつも「役立たず」と蔑まれてきた俺、トワルは、座が畳まれ流民になったところを、諸国を巡る大一座「影絵座」の傀儡王に、糸ごと拾われた。捨てられかけた半端者。もう、誰の役にも立てない、そう思っていた。影絵座を率いる傀儡王カイゼルは、触れた木偶も人も、声も眼差しひとつで意のままに操れると畏れられる男。誰も本心では近づけない、孤独な花形。その拾われた夜、俺は生まれて初めての発情期に襲われる――自分がオメガだと、その日まで知らなかった。引き寄せられたアルファの座衆を、傀儡の血ひとつで竦ませた傀儡王に、誰も近づけない。震える手で、俺はただ、いつもの木偶に糸を繰った。すると、万物を操るはずのその男の血が、俺の糸には、届かなかった。糸は、俺の心のままに動いた。「これだ。俺に操られぬ唯一の糸。俺に、操っていない心を返す者。お前が、俺の運命の対だ」。拾われた半端者のはずの俺を、傀儡王は番として囲い、二度と、離してくれない。俺の中に眠る"糸の血"だけが、万人を操る傀儡王に操られないと、やがて知る。番化、興行元締の企み、別の一座の頭による略奪――旅の影絵座の灯影の下で、俺は役立たずのはずが、この人にだけは、二度と離さないと守られていく。BL異世界オメガバース長編・全10章完結。

