彩光の硝子宮の工房で、吹き硝子の下働きをしている俺、ネージュは、孤児上がりの役立たず。前線で戦えぬ非力な半端者。工房の賄いペトラに拾われて育った、いつ捨てられてもおかしくない身だ。宮の主――硝子宮の彩光王ラドヴィクは、色彩を統べる「彩光の血」が濃すぎるあまり、その眼が強い光しか映さず、世界が白く灼けて人の顔も色も見えぬと畏れられる男。誰も彼の眼に「見て」もらえない、色を喪った白い孤独の王。その召し出された夜、俺は生まれて初めての発情期に襲われる――自分がオメガだと、その日まで知らなかった。群がるアルファたちを、灼けるような光の眩さで散らした王に、誰も近づけない。震える手で、俺はただ、いつも吹いている小さな彩硝子を、光にかざした。すると、白く灼けて何も見えぬはずのその眼に、色が、返った。「これだ。俺の眼に色を灯す者。お前が、俺の運命の対だ」。捨てられかけた下働きのはずの俺を、彩光王は番として拾い、二度と離さないと誓う。俺の中に眠る"硝子の血"だけが、盲いた王に色を返せると、やがて知る。番化、交易組合の企み、隣の工房の頭による略奪――色に彩られた硝子の宮で、俺は捨て駒のはずが、この人にだけは、拾われて、離してもらえない。BL異世界オメガバース長編・全10章完結。
