剣の里・鎬郷(しのぎきょう)で、没落した研ぎの宗家の最後の跡取りとして刀を研ぎ続けてきた俺、澪。誇りだけは折らぬと決め、施しを拒み、たった独りで砥石に向かって二十歳になった。ある日、武神の道場宮・真銘宮への刀納めの奉納で、俺は突然、発情期に襲われる――自分がオメガだと、その日まで知らなかった。フェロモンに群がるアルファたちを、抜き放った一刀で制したのは、不敗の剣聖と崇められる剣神・雅刃(がじん)。無銘の劔祖の血を最も濃く継ぐその男の佩刀を、俺は混乱の中で一目で読み切った。刃の真――真銘を。「俺の刃の真を見抜くのは、その眼だけだ。お前が、俺の運命の対だ」。剣神に見初められ、真銘宮の奥に囲われた俺は、剣神の刃を真に研ぎ出せる"剣祖の研ぎの血"を宿していたことを、やがて知る。だが俺は研師だ。飾りの番になる気はない――番化、宗家評定の政争、他流の剣客による略奪。逃げ場のない道場宮で、誇り高き俺は、剣神の独占愛に、矜持を折られぬまま堕とされていく。BL異世界オメガバース長編・全10章完結。

