流浪の風読みの子として、風笛ひとつを抱いて飛空艇から飛空艇へ渡り歩いてきた風笛弾きの俺、アイル。乗り込んだ商用飛空艇が雲上の大颪に呑まれ、翼帆の切れ端にしがみついて青い空を墜ちていった俺を拾い上げたのは、セレスタの空に恐れられる空賊連合の総帥――非情の空賊王ジェドの旗艦、風斬号だった。助かった、と息をついたのも束の間、風に混じって俺の身体から甘い匂いが立ちのぼる。発情期。オメガと知られ、殺気立つ乗員たちの前で、ジェドは静かに言った。「触るな。こいつは俺の番だ」――と。十年前、大颪の夜に一度だけ交わした「空縁の誓い」。顔も覚えていない相手の風笛の音を、この男はずっと探していたという。攫われた飛空艇、逃げ場のない船室、番を狙う敵の空賊頭。抗えぬ運命の対に囚われて、俺はゆっくりと、この空賊王に堕とされていく。BL異世界オメガバース×空中冒険長編、シリーズ第1巻・全10章完結。

