北辺の防衛戦線。鉄と血の匂いに満ちた城塞で、俺──アシェルは、従軍薬師として傷病兵の手当てをして生きてきた。占領された故郷の村から連れてこられ、捕虜同然に軍へ組み込まれた身。俺には、誰にも言えない秘密がある。俺はオメガだ。抑制薬でフェロモンを封じ、ベータと偽り、アルファ兵ばかりの陣で息を殺してきた。だが、雪の夜営で薬が尽きた。抑えきれない発情のフェロモンが、篝火の煙にまじって漏れ出す。殺気立ったアルファ兵たちが群れ、俺は終わりを覚悟した。──そのすべてを、たった一人の男が制圧した。常勝の軍神と畏れられる将軍ラグナル。戦神の血を引く鉄血の男が、俺のうなじを見て、確信の声で言った。「隠していたな。だが、もう遅い。お前は俺の番だ」。暴かれ、囲われ、番を強いられる。逃げ場のない城塞で。けれど俺の身体には、俺自身も知らない古い戦神の血が眠っていた──。BL異世界オメガバース×戦記×番の溺愛執着長編、シリーズ第1巻・全10章完結。
