生と死のあわいに食がある。
植野さんの美味しい家族のはなし
涙ひとさじで塩味増し
賞味期限は永遠
――春風亭一之輔氏
食の雑誌「dancyu」の名物編集長として、筆者は全国津々浦々の「旨い」を追いかけてきた。
しかし、その味を、父と母には土産話としてしか届けられず。編集長を退き、いよいよ親孝行を……
そう思った矢先、父の胃癌が判明。リウマチを患う母も施設に入所した。
「おかめや」の焼きそばに平目のエンガワ、そしてたらちり。
急に遠くなってしまったふたりを思うなかで、筆者がよすがとしたのは、食の記憶だった。
「新聞記者を辞め家業の焼きそば屋を継ぎ、酒と落語を愛し、「人は生まれることは選べないが死に方は決められる」と言っていた通りに亡くなった父。料理上手であったものの、リウマチに苦しみ父に頼って暮らしていた日々から突然取り残された母のことをエッセイにしたためました。
父母との思い出が僕の食の原点であったこと、美味しい食べ方やレシピ、好きな店なども含め、僕の食への思いも書き連ねています」(著者より)

