前世、大手監査法人で七年走り続け、誰にも報われないまま過労で倒れた二十八歳の公認会計士。気がつけば加護も魔力もない『出来損ない』第五公女エルザリーデに転生していた。社交界には見捨てられても構わない——けれど嫁ぎ先と決められた国境ヴァルガルト辺境領は、私の前世スキルを待っていた。三十年分の領地帳簿は行方不明、年貢は二重三重に取られ、守備隊の俸給は半年遅配が常態。前世の原価計算と棚卸を当てたら、半年で領庫残高が三倍になった。その腕を最初に見抜いたのは、冷酷と呼ばれる若き辺境伯ライナルト閣下。「お前の帳簿の腕はこの辺境のためのものだ。二度と他所には行かせない」——容姿でも血筋でもなく、私の有能そのものを最強の男が独占する。帳場の算盤の向こうから始まる職能ベースの溺愛が、章を追うごとに前世の鬱屈を救っていく。元帳と算盤、俸給袋の物理ディテール、初めて正しく評価される自己効力感——前世会計士の異世界お仕事ロマンス。長編TL。

