没落料亭『結城屋』の長女・結城瑞月、二十六歳。家門の借財を返すため薬膳料理研究家として働いてきた私が、八つ年上の朝比奈医家十代目当主・悠仁様の妻として籍を入れた——けれど婚姻届を出すその場で、旦那様は係員に副え書きを願い出られた。「私たちは婚姻はいたしますが、夫婦になる必要はないものといたします」。健康上のご事情で、二人前の朝餉も整えない、白い結婚。私はほっとして、ただの同居人として静かに暮らすつもりだった。なのに、旦那様の朝の二膳が、止まらない。毎朝、対の湯呑が並び、二人前の朝餉が私の席にも届き、中扉は片開きにされている。夫婦になる必要なしと仰ったのはそちらなのに、なぜ——。触れない誓いと裏腹の、毎朝の二膳に込められた旦那様の不器用な本心に、私の胸もだんだん追いつかなくなっていく。すれ違いも別離もない、白い結婚から始まるじれじれ甘溺愛。現代和家屋もの女性向けTL。全十章・ハッピーエンド確定の単巻完結。
