廃業の瀬戸際にあった金継ぎ工房と、行き場のない見習いの娘・芳乃。老舗の若主人・朔が差し出したのは、跡継ぎはいらない、夫婦にはならないという「白い結婚」だった。家の名跡を絶やすための、形だけの妻――家のためのお務めと割り切った芳乃は、夜ごと割れた器を継ぎ、金の線を走らせる。割れた断面はただ一通りにしか嵌まらない。「ここにしか戻れない」その合わせ目に、芳乃は職人の誠実を込める。やがて朔は、芳乃が継いだ器でしか食事を取らなくなる。「捨てろ」と命じたはずの割れ茶碗を、こっそり継いで肌身近くに置いて。立ち入らせないはずの奥座敷に、夜ごと彼女の継いだ器を並べさせて。これはお務め、それ以上は望めない――鈍感に手を動かす芳乃と、触れぬ宣言を守れず痕跡を蒐集する若主人。割れと継ぎと漆の乾きが描く、溺愛じれじれ現代和風TL。壊れたものが金の線で結ばれるように、二人もまた本物になっていく。◆白い結婚/溺愛/家格差/現代和風/金継ぎ職人/じれじれ/ハッピーエンド◆
