母を喪い、薬種商の三女として育ったニナが見初められたのは、大公アスランの「一年限りの白い結婚」だった。喪服明けまでの形だけの妻、触れぬという誓い――身分の低い自分は、ただ安全な盾として呼ばれただけ。そう割り切ったニナは、毎晩、渡り廊下の境まで一杯の薬湯を運ぶ。碗を温め、蜂蜜をひとさじ。眠れぬ大公のための、ささやかなお務めのつもりだった。けれどアスランは、その薬湯を飲み干さず、湯気の向こうを見つめる夜を重ねていく。「白い結婚だから」と立ち入らせないはずが、ニナの淹れたものだけを求めて。これはお務め、それ以上を望んではいけない――鈍感に線を引くニナと、触れない宣言を守れず痕跡を集める大公。凍った心が薬草と灯りの温もりで溶けていく、溺愛じれじれ異世界TL。やがて二人は本物の春へ。◆白い結婚/溺愛/身分差/異世界/宮廷薬師/じれじれ/ハッピーエンド◆

