ファレーズ辺境伯令嬢エルミーヌは、モンフォール公国の春の調香茶会で、腹違いの妹シャルロットに婚約者のヴェルノン辺境伯を奪われた。「運命の対なのです。姉さま、どうか婚約を譲ってくださいまし」――衆目の前で泣き縋られた瞬間、わたくしは悟りました。反論すれば哀れな被害者にしかなれない。けれど悪女として能動的に振る舞えば、ルールを書く側に回れる、と。鈴蘭の香水瓶の栓を緩慢に抜き、棒読み気味に微笑んで「よろしいですわ。香りごとお譲りいたしましょう」と差し上げた瞬間、社交界は「調香姫がついに本性を現した」とざわめいた。けれどただ一人、冷徹な辺境伯オーギュスト閣下だけが、わたくしの悪女の香りを最初から嗅ぎ分け、「あなたの香りの作法を読み解く共犯者になりましょう」と告げる。持参財を信託に綴じ込み、婚約祝いの茶会を主催し、敵が自ら毒の罠に踏み込む――その全てを「今宵の香り、見事でしたね」と称賛してくれる閣下と、悪女を解いた素のわたくしだけの要塞館の閨房。能動逆転の長編TL。全十章完結。R18女性向け官能。
