粉は、その日の気温と湿りで機嫌を変える——指の腹で生地の張りを読み、その日の水と塩の割を決める。王都の老舗製麺所で十年ぶんの朝を立ってきた麺打ち娘が、麺司の座を追われ、たどり着いたのは水車のまわる渓谷の宿場だった。打ち捨てられた水車小屋で粉と水と塩だけを相手に手延べ麺を打ちはじめると、するりと喉を通る一杯が評判を呼び、お代官様までもがお忍びで通ってくるように。雨の前の朝、晴れた冬の朝——粉の機嫌を読み分ける丁寧な手仕事が、鉱夫や隊商、渓谷じゅうの人々の腹と心を満たしていく。製麺所を追われた娘が、自分の一杯を待ってくれる人々の真ん中で居場所を築く——渓谷の祝言と新しい朝まで。喉ごし爽やかなスローライフ・グルメ譚。#異世界スローライフ #料理 #グルメ #ハッピーエンド #全年齢

