指の先にひと垂らし、舐めて、花の香りを読む——それが、いちばん最初の作法だった。聖アーデルハイト修道院の菓子房で十数年ぶんの朝を立ってきた菓子係ノエルは、ある日とつぜん追放を言い渡される。彼女が辿り着いたのは、百花蜜の香りに包まれた蜂蜜の村ハーゼリッヒ。師から受け継いだ蜜を読む手で、村の竈に焼き菓子の甘い香りを満たしていくと、見回りの騎士が日に三度も立ち寄るように。春の軽い蜜、秋の濃い蜜——季節ごとに表情を変える蜜を活かした菓子が、果樹番や養蜂家、村じゅうの人々の心をほどいていく。修道院を追われた娘が、自分の手で帰る場所を見つける——林檎の熟れる収穫祭の祝言まで。甘く優しいスローライフ・グルメ譚。#異世界スローライフ #料理 #グルメ #ハッピーエンド #全年齢
