目を閉じても、香りだけで蔵のどこに何が積まれているか言い当てられる——。後妻と番頭にフラント商会を放逐された目利き娘リリエは、旅装の鞄ひとつを抱えて潮の匂う港町へ流れ着く。十数年で磨いた利き鼻だけを頼りに、彼女は港の食材で燻製と果実酒を仕込みはじめた。熟れた林檎と燻しの煙——その滋味あふれる一品が波止場の評判を呼び、無口な船問屋の主人ヴェルクが、毎日舫いを解かずに彼女の店先へ居着いてしまう。やがて行商の女も漁師たちも、彼女の卓を囲むようになり、港じゅうの食卓がひとつに結ばれていく。商会を追われた娘が、自分の手と鼻だけで居場所を築く——帰港祭の祝福に包まれる幸せな結末まで。潮風の香るスローライフ・グルメ譚。#異世界スローライフ #料理 #グルメ #ハッピーエンド #全年齢
