王宮主計官マルレーネ・ベルクシュトラム伯爵令嬢の婚約者には、社交界の華と知られる公爵令嬢への寵愛が公然と続いている。王宮財務評議会の侯爵当主代行ヴィルヘルム様。地味で算盤と帳簿の数字しか見ていない私とは釣り合わない。だから婚約は私から白紙に——けれど彼は「お受けしません」と微笑むだけで、婚約解消申請書を決して受け取ってくださらない。「あの公爵令嬢が君の主計帳簿に偽の数字を書き込もうとしたあの宵から、私の見方は変わった」。婚約継続のまま、秋の長夜を境に、彼の眼差しと指先は私だけに注がれるようになって——。華やかなライバル令嬢が公金横領の露見で因果応報の自滅をしていく中、婚約解消を望んだはずの私が、いつのまにか侯爵当主代行に骨の髄まで甘やかされている。王宮財務評議会の温室と侯爵邸の月見台を行き来する、身分差なし・断罪なし・破棄なしの「破棄せず」型逆転TLハッピーエンド長編、全十章完結。

