紺青高校三年・浮舟透、十八歳。学園のヒエラルキー外モブとして誰とも揉めずに生きてきた俺は、深夜カラオケ「ナイトクラウン」のバイト初日、走り屋ドリフトチーム「DRIFTBLADE」のヘッド・百々瀬アリスとドリンクバー裏で二人きりになる。プラチナアッシュのウェーブ、黒のレザージャケット、フルフェイスヘルメット——峠で誰もが避ける最強の走り屋姫。なのに彼女は俺の前でだけヘルメットの内側を指で拭い、グローブを膝に置き、赤いハート型ペンダントを掌で握って視線を伏せる。公の場ではRX-7を吹かして怒鳴るカリスマが、二人だけのヘアピンカーブの展望スポットでは「ねぇ、もう一回、名前で呼んで」と語尾を白い息に溶かして崩れる。闇カワロリィタJK・朱鷺野ひなめ、陸上部中距離エース・雛森きさら、放送部部長・鴻巣凛々花。威圧的な四人の少女が、俺の前でだけ「霜になる唇」になっていく——ガラの落差で堕とす真冬深夜の峠崩し、全十章完結。
