海洋連邦の王宮詩歌祭、予選披露の場で、義弟ジョスランは群衆の前で涙ながらに告げた。「あの方の婚約者の席は血の遺嫡として正当にわたくしのもの。どうか公爵閣下との婚約を譲ってくださいまし」。ペルラルド子爵令嬢シリルは即座に悟る。反論すれば血統を疑われた被害者にしかなれない。ならば悪女として能動的に振る舞い、ルールを書く側に回ろう、と。珊瑚色の歌冊を緩慢に閉じて棒読みの微笑みで「血の遺嫡なら仕方ありませんもの」と歌の席を譲って差し上げれば、貴族たちは「凪の歌姫がついに本性を現した」とざわめいた。だがただ一人――法務総長公爵ジュリアン・モンテヴェルデ閣下だけが、わたしの詩歌の悪女ぶりを見抜いていた。「あなたの歌譜を読み解く共犯者になりましょう」。血の遺嫡の儀を信託で公開し、商船航路を譲る不可逆の証書を綴じ込み、敵が自ら深みにハマる――全てを「最高の譜でしたね」と称賛する公爵と、素のわたしだけの閨房の物語♡ 能動逆転長編TL。
