春の大舞踏会で、シェルヴェイユ伯爵令嬢ナディアは腹違いの妹に婚約者の公爵を奪われた。「あの方とは命の番だから婚約を譲ってくださいまし」――衆目の前で涙目で迫られた瞬間、わたしは悟る。反論すれば被害者にしかなれない。ならば悪女として能動的に振る舞い、ルールを書く側に回ろう、と。薔薇色の扇を緩慢に開いて棒読みの微笑みで「よろしいですわ、命の番なら仕方ありませんもの」と譲って差し上げれば、社交界は「銀百合がついに本性を現した」とざわめいた。けれどただ一人――公爵リシャール・ヴァロワ閣下だけが、わたしの演技を最初から見抜いていた。「私はあなたの作法を読み解く共犯者になろう」。婚約譲渡祝いの茶会を主催し、財産譲渡証書を信託で公開挑発し、敵が自ら深みにハマる――その全てを「最高でしたね」と暗い昂揚で称賛する公爵と、演技を解いた素のわたしだけの閨房の物語♡ 能動逆転長編TL。
