婚約を破棄され、家門の紋すら手放した伯爵令嬢クララは、革表紙の記録箱ひとつを抱えて南方の海を渡った。役立たずと罵られた私を拾ってくれたのは、海洋共和国セレディア港の海事ギルド長だった。亡き母から受け継いだ航海図と潮汐表の腕で、私は潮風と灯台の光に包まれた穏やかな日々に馴染んでいく。やがてその技は海事ギルドの人々、そして共和国評議会の方々にまで頼られるようになり、私を見捨てた家門の人々は、自らの選択の浅さに気づき始める。声を荒らげる復讐ではない。役立たずと罵った者たちが勝手に立ち行かなくなる、静かな「ざまぁ」と、寡黙なギルド長との桟橋の灯の下の寄り添い。婚約破棄から始まる拾われスローライフTL、潮騒に満ちた全十章完結のハッピーエンド。

