選ばれる側じゃない――そう信じて生きてきた。北の港町で遺品整理士をしている湊川凪人は、死んだ人の部屋を黙々と片づける、誰にも特別だと思われない男だ。ある日の現場、故人が遺した古いグランドピアノの引き取り査定に現れたのが、老舗楽器会社の御曹司にして天才調律師の御園透真だった。氷のように整った美貌の彼は、なぜか凪人の荒れた手ばかりを、静かに、まっすぐ見つめてくる。死者を扱い続けてきたこの手の、どこに価値があるというのか。戸惑う凪人へ、彼の執着は穏やかに、けれど確かに深まっていく。形見のピアノの狂った音を、最後まで聴いてくれる人。誰も与えてくれなかった「君だから」を、その手に差し出してくれる人。半分しかなかった世界が、満ちていく。BL現代執着ラブ長編、全10章完結。

