秋の夜会で「役立たず」と婚約を解消されたノエラ。けれど彼女は取り乱さない――社交界に居場所を失った伯爵令嬢には、王立古文献庫で培った確かな手仕事と、向かうべき極北があった。雪深いアルベシュタイン修道院で、古い祈祷書の修復と写本を任された彼女は、羊皮紙と藍墨、羽根ペンと封蝋を手に、回廊に朝祷の鐘が響く静かな日々を、ひと文字ずつ積み上げてゆく。やがて修道院長補佐騎士の不器用な気遣いに見守られながら、ノエラの写本は王立祈祷院から、そして王宮中の人々から頼られるものへと変わっていく。かつて彼女を見限った者たちが評価を悔いはじめる頃、彼女はもう、誰かに選ばれることの穏やかな温かさと、自分だけの居場所を見つけていた。極北の修道院で綴られる、静かなスローライフ・ロマンス第一巻。
