舞踏会の夜、「役立たず」と侯爵令息に婚約を解消されたエルメリア。けれど取り乱しはしない――社交界に居場所を失った彼女には、秘宝学院で磨いた確かな目と、向かうべき砂漠の街があった。陽炎ゆれるオアシス都市ザマールで、寡黙な隊商頭主ザイードに迎えられた彼女は、拓本を起こし、古代文字を読み解き、埃をかぶった古文書館を一つずつ整えていく。やがてその秘宝鑑定の腕は王国中の隊商を動かし、かつて彼女を「地味な令嬢」と侮った者たちは、偽りの秘宝とともに静かに足元を崩していく。月光交易の夜、星見の盤を挟んで向き合う隊商頭主が胸に秘めるのは、十年越しのささやかな願い――この人を、この街に留めたい。婚約破棄から始まる、砂漠のオアシス都市の交易スローライフ・ロマンス。

