舞踏会の宵、「役立たず」と婚約を解消された伯爵令嬢リーゼ。けれど取り乱しはしない――社交界に居場所を失った彼女には、王立航海学院で磨いた海図技師の腕と、向かうべき先があった。南方の自由港セレナ港。先代の代官夫妻が遺した旧造船所と古い海図台帳を任され、六分儀と羅針、潮汐表を携えて旅立つ。出迎えたのは、静かな声で「迷ったら、ここへ戻ってきていい」と告げる若き代官アシュレイ。突堤の灯台の灯が潮の上を回る港町で、リーゼは藍墨の海図を一枚ずつ引き直し、その慎ましい手仕事は港湾民や王国海軍、王宮の海事局からも頼られるようになっていく。潮の匂いと灯台の灯、海の四季の移ろう港町で紡がれる、追放令嬢のスローライフ・ロマンス第一巻。
