町の時計工房が老舗時計宝飾メゾン「常磐堂」に継承され、修理受付の契約社員として採用された私を待っていたのは、「氷の専務」と呼ばれる御曹司・常磐透。五年前の台風の夜、祖父の形見の懐中時計を預けたまま受け取れなかった、あの青年職人だった。「やっと、見つけた」──冷徹な双眸の奥で五年分の執着が灯る。私は彼を覚えていないのに、彼は秒針が一度だけ動いた瞬間に零れた私の涙まで覚えていた。深夜の工房、政略縁談の影、文字盤裏に刻まれた小さな星。誰の記憶にも残らないと諦めた私は、五年間ずっと、一人の男に正確に探され続けていた。記憶執着の格差溺愛・現代TL長編、全10章完結。

