没落子爵家の令嬢セシリアは、家計のため辺境伯アルヴィスとの「子をなさぬ名目婚」を受け入れる。第一条「両者は子をなさず、契約は当主一代限りとする」――政略縁談を封じる盾としての契約のはずだった。けれど二人は「契約を完全にする」名目で、互いに条項を手書きで追記しはじめる。義務の建前で書き足すセシリア、効率の建前で書き足すアルヴィス。双方が相手の追記を「契約に忠実なだけ」と解釈し、誰よりも近くにいながら互いの本心に気づかない。やがて社交、王家からの縁談圧力、そして契約に明文で違反する一夜が、書かれた言葉と本物の感情の境界を崩していく。「言葉で縛り、言葉で解く」、生きた契約書の往復書簡が、二人を本物の婚姻に書き換えていくジレジレ過程恋愛譚。シリーズ第1巻・全10章完結。

