十年ぶりの柳州。湿った熱気と饐えた匂いの中、二十四歳の苗靖は、かつて「家族」と暮らした古いアパートへ帰ってきた。そこには、血の繋がらない「兄」がいた。半ばチンピラのような稼業で食いつなぐ陳異??彼女を疎み、追い払い、それでも追い出しはしない男。冷ややかに距離を取る苗靖と、粗暴に突き放す陳異。互いを「いらない」と言いながら、二人はひとつ屋根の下で、奇妙な均衡の中に暮らしはじめる。しかし、かろうじて保たれていた均衡は、陳異の女の登場で軋みはじめる??。寄る辺ない者だけが知っている、荒れた街の片隅の物語。誰にも必要とされなかった二人が、互いだけを「わかって」しまう、その始まり。※本作は月城 螢の個人誌作品の電子書籍版となります。
