「わざわざ虐げる気はない。だが、俺はお前と夫婦としての関係を望まない。それだけ承知しておけ」魔力に恵まれた名門・トールマン一族に生まれながら、ほとんど魔力を持たず“魔力なし”と蔑まれてきたエレン。幼くして両親を亡くし、本家に養子として引き取られた彼女は、家の道具として政略結婚のために育てられてきた。十六歳となったある秋の日、王命によって辺境を治める若き領主・ジェイク・リフターとの婚姻が決まる。だがその縁談には、口外できない重大な事実があった。エレンの魔力はわずかしかなく、それを隠して「魔力持ちの令嬢」として嫁がせたのだ。そして迎えた初夜、夫から投げかけられたのは、夫婦としての関係を拒絶する冷ややかな言葉。居場所も役割も与えられず、“お飾りの妻”としての日々が始まる。それでもエレンは自分にできることを求め、刺繍に自身のわずかな魔力を込めて、命懸けで魔物討伐にあたっている彼の無事を願うお守りを作り始める。その想いは、やがてジェイクの中に小さな変化を呼び——

