『維摩経』は一世紀末に著された初期大乗仏典である。釈尊の入滅から約五百年後、仏教界が保守化、権威主義化した。その反省から生まれたのが大乗仏教運動であり維摩経である。聖徳太子が注釈書を記すなど日本でも重視されてきた。本書は二〇世紀末に発見されたサンスクリット写本を著者自ら翻訳・精読。仏典に書かれた戯曲的な記述の意味、在家主義、男女平等について、空・不二・中道の思想などを平易に解説する。
■目 次■
はしがき
I 『維摩経』の基礎知識
1 主人公、ヴィマラキールティについて
2 商業都市ヴァイシャーリーについて
3 アームラパーリーとその園林
4 題号の意味
5 『維摩経』と『法華経』に至るインド仏教史の概略
II サンスクリット写本と諸翻訳間の異同
1 漢訳の七訳三存四欠
2 古訳・旧訳・新訳の比較
3 サンスクリット写本の発見とその出版
4 『維摩経』貝葉写本の校訂と現代語訳
III 『維摩経』各章の思想
1 第一幕=アームラパーリーの園林にて
第一章 ブッダの国土の浄化(仏国品第一)
第二章 考えも及ばない巧みなる方便(方便品第二)
第三章 声聞と菩薩に見舞い派遣を問う=前半(弟子品第三)
第三章 声聞と菩薩に見舞い派遣を問う=後半(菩薩品第四)
2 第二幕=ヴィマラキールティの邸宅にて
第四章 病気の慰問(文殊師利問疾品第五)
第五章“不可思議”という解脱の顕現(不思議品第六)
第六章 天女(観衆生品第七)
第七章 如来の家系(仏道品第八)
第八章 不二の法門に入ること(入不二法門品第九)
第九章 化作された菩薩による食べ物の請来(香積仏品第十)
3 第三幕=再びアームラパーリーの園林にて
第十章 「尽きることと尽きないこと」という法の施し(菩薩行品第十一)
第十一章 “不動であるもの”という如来との会見(見阿しゅく仏品第十二)
第十二章 結論と付嘱=前半(法供養品第十三)
第十二章 結論と付嘱=後半(嘱累品第十四)
IV 『維摩経』の人間主義
1 大乗仏教における在家の復権
2 「空」による現実肯定の思想
3 「空」の思想と政治活動
4 自立した女性像を描く
5 言葉の限界性と必然性
6 マイトレーヤ菩薩への皮肉
V 『維摩経』と『法華経』が現代に問いかけるもの
1 自在に社会貢献する菩薩を待望
2 AIの台頭と仏教の役割
あとがき
参考文献

