「誌面が腐る。これは爆弾だ。――掲載はできん」昭和三十九年、東京オリンピックの狂騒に沸く日本。その光の陰で、一人のカメラマンが足を踏み入れたのは、地図から消された「原始の異界」だった。新宿・ゴールデン街で出会った怪物、五味大造。奥信濃の山奥を支配するこの「殿様」に招かれ、写真家・杉本が目撃したのは、文明の論理を根底から覆す「血の再生産」の儀式だった。そこでは、男たちは雪のような白き六尺褌(ろくしゃくふんどし)一丁で君臨し、女たちは一族の血を繋ぐため、その支配者の前に列をなす。静寂を切り裂く「シュシュッ」という褌が解ける音。剥き出しになる野性と、それを受け入れる女たちの恍惚とした表情。カメラが捉えたのは、淫らなポルノグラフィなどではない。太古から続く、あまりにも残酷で、あまりにも美しい「繁殖」という名の信仰だった。あまりの衝撃に当時の編集長が掲載を拒絶し、半世紀もの間、金庫の奥底に葬られていた禁断のフィクションルポルタージュ。ダムの底に沈んだはずの「繁殖の記憶」を、イラスト+テキストで楽しめます。
