文学における異文化交流とは何か、その探求に挑む。
文学において〈“異”なるもの〉とは何か、〈“異”なるもの〉とどう出会い、葛藤し克服していったのか、あるいはなしえなかったのか。それらがいかなる文学創造や享受、再生をもたらしたのか。
異文化交流文学論のあらたな起点となる書。
取り上げるテーマは、中国、朝鮮半島、日本、琉球、ベトナムという、文字通りの東アジアに広範に及び、時代も一六世紀前後を焦点としつつも古代から一九、二〇世紀にもわたる、多彩で問題提起に満ちた論考の集合体。全体は、I 文学と歴史のあいだ、II 外交と学芸と文学、III 交易、交通の文学、IV 宗教の文学、V 戦争の文学の五部に分かれる。
歴史事象として史学からのみとらえられがちな異文化交流の問題を、文学の問題として位置づけ直したり読み換えたりする、表現史としての試みをおこないつつ、「異文化交流文学史」の基本的な方法論を提起する。各論としては、外交や漂流、拉致者の異文化交流、あるいは内外の異文化に及ぶコレクションをめぐる交流等々、書籍類を焦点に検証したり、経済や交易、物流などの流通の問題を異文化交流として定位し、文学面からとらえようとする。また、東アジアの宗教としての仏教、道教、神道、キリシタン等々について異文化交流の面から文学としての課題を検討を加えるほか、蒙古襲来や壬辰倭乱、薩摩の琉球侵略等々、東アジア世界で勃発した対外戦争や侵略などを焦点に文学の課題として検討も行う。
既存の時代別、ジャンル別、誕生・隆盛・衰退といった定番の予定調和的な文学史観に依存せず、『源氏物語』に象徴される古典として権威化した、カノンとしての文学作品にのみ依拠しない。一般には文学と認知されていない諸作品や諸資料、あるいは歴史史料とされているものも逆に文学として読み換える、そうした融通性やダイナミズムからあらたな文学史を指向する。言葉や文字による表現史、あるいは絵画や造型、その他種々のメディアと複合させ、輻輳させた文学史観、言い換えれば、「何でもありの文学史」を基軸にする。

