レコード店は「音楽を買う場所」を超え、共同体、記憶、文化が交錯する<社会空間>である。本書は、世界各地のレコード店をめぐりながら、そこに生まれる関係性や階級、ジェンダー、サブカルチャー、そして地域文化を多角的に分析。デジタル時代における「場所」の意味を問い直す、社会学・文化研究の新しい視座を提供する一冊。ロンドンのレゲエ店からナイジェリアのジャズホール、東京の輸入盤店、革命前後のイラン、ポルトガルやスペインの観光地化するレコード店、ナイジェリアやルーマニアの音楽インフラまで。22章のケーススタディは、レコード店がどのように人びとの文化生活を支え、文化の公共圏として機能してきたのかを明らかにする。レコード店には、人びとの趣味が交差し、見知らぬ者どうしが語り合い、都市の片隅から文化が立ち上がる瞬間が息づいている。音楽研究・社会学・文化史・都市研究に携わる多国籍の研究者・批評家が、ポピュラー音楽研究、レコード産業史、都市文化論、若者文化史、社会主義圏の文化政策、ディアスポラ研究などを背景に、レコード店という“小さな場”を多角的に読み解いた一冊。店舗と共同体のヒントとなる書。<目次> イントロダクション レコード店とは何か――その社会的・文化的意味を探る ジーナ・アーノルド、ジョン・ドゥーガン、クリスティーン・フェルドマン=バレット、マシュー・ウォーリイ プロローグ レコード店に救われた人生 マーク・トレハス パート1 コミュニティとしてのレコード店 嗜好・記憶・つながり ファイアコーナー――ブラック・ロンドンのレゲエ店と文化交流 ケニー・モンローズ レコード店で育つ――少女の記憶と成長 ホリー・グリーソン レコード・バーというカルト スティーヴン・シェアロン 70年代からデジタル時代にいたるブリズベンのオルタナティヴなレコード店 ベン・グリーン 25年間の『ハイ・フィデリティ』――嗜好とストリーミングの変容 ジョン・ストラットン カウンターの向こうにいた女性たちの視点 リー・アン・フリントン “本物”を守る店の闘い――ニューオーリンズの独立系店は災害後、どう生き残ったか ジェイ・ヨレス パート2 レコード店の文化地理学 地域社会・都市変動・グローバル文化 スペインとポルトガルの観光地化/高級化するレコード店――キュレーターの地位とは? フェルナン・デル・ヴァル 音を売る――ポルトガルの独立系レコード店の挑戦 ポーラ・ゲラ 社会主義末期から現在までのルーマニアのレコード店――“音楽の入手”の政治史 クラウデュウ・オアンチャ ナイジェリアのジャズホール――ローカル・ジャズ文化を守り続けたレコード店 エロモ・エグベジュール 日本ポピュラー音楽史における輸入レコードと小売店の役割 加藤賢 アイルランド人の経験をレコーディングする――アーカイヴとしてのレコード店 ポール・ターペイ 革命はTVで放送されず、テープに録音される――革命前後のイランで西洋音楽を入手するには リリー・モアエリ パート3 サブカルチャー資本 ファンダムと趣味の実践の場として 企業の隙間で鳴らすインディの音――ニュージーランド、オテアロアの小さなレコード店で働いたおかげで人生がどう変わったか ロイ・モンゴメリー リップ・オフ・レコーズ(ハンブルク)――資本主義のミクロストリア カール・シーベンガートナー ソウル・ボウル――発掘されたレアなソウル クリストファー・スピンクス ラッキー・レコーズ――音楽は人々を団結させる マリアナ・リンズ ラフ・トレード・パリ――90年代カルチャーの震源地 ジャン・フベール レコード店とミュージシャンの関係性――アメーバ・ミュージックの事例から クリスティン・フェルドマン=バレット 北米のセルフサーヴィス・レコード店――客が“語る”コンテンツ ティム・J・アンダーソン 英国の試聴ブース――試聴空間の雰囲気学 ピーター・ヒューズ・ジャキミアク
