小さな珈琲会社で働く真紀は、デパート催事の企画提案に失敗した帰り道にいた。胸の中では悔しさと情けなさがぐるぐると渦巻く。「社長にどう報告しよう」「がっかりさせてしまう」そんな負の感情でいっぱいになっている時――。最近転職してきた水野くんが、突然写真を撮り出した。「……は?」真紀は呆気に取られる。パシャッ。場違いなシャッター音に、心の糸がぷつりと切れた。「必死になってる私がばかみたいじゃない!」努力してきたのに届かなかった悔しさ。落ち込みの最中での能天気な言動。さらに水野くんは「お腹空いてません?」とスマホでランチを調べ始める始末。――どうしてこの人は、こんなにズレているんだろう。けれど、真紀はまだ知らない。水野くんの“空気の読めない行動”の奥に、どんな思いがあったのかを。そして今日という日が、自分の中の何かをそっと変えていくことになるのを――。仕事で落ち込み、誰かの言葉に苛立ち、「私だけ必死みたい」と心がちくりとする瞬間。そんな日常の感情を丁寧にすくい上げる、恋愛未満の物語。27ページ

