書き手の態度や依拠文法ごとの区分として捉えられてきた「文体」は、実証的かつ具体的な分析概念として鍛えなおされ、「文体」によるあらたな文学の研究方法がうちたてられようとしている。(多田蔵人)
『文体史零年 文例集が映す近代文学のスタイル』(令和7年3月31日、文学通信)の出版準備がととのいつつあった令和6年10月13日に、国文学研究資料館共同研究室にて行われた討議の記録。
『文体史零年』は、幕末から戦後にかけてさまざまなジャンルで大量に発行された「文例集」――模範文集や語彙集、アンソロジーにいたるまでを広くこう呼んでいる――を手がかりとして、近代文学の「スタイル」を把握しようとする論文集であった。
「徹底討議」の語は見栄や看板ではない。
討論は13時から18時まで、ほとんど休憩なしに行われた。『文体史零年』所収論文と同書所収の文例集カタログ「文範百選」の執筆を終えた時点での討議であるため、文体史の稜線のようなものは、本書の方がかえって見えやすくなっているかもしれない。あちこちに見える意見の衝突や対立も、それ自体が出発を告げた学問のわかわかしいエネルギーの証である。お手にとった方にはぜひとも自分なりの「異議」を育てていただき、さらに『文体史零年』本冊をもご覧いただきたいと思う。
