隣室に住む女子高生を「見守っていた」大学生・重(かさね)。ある夜、彼はのぞき穴越しに、彼女が返り血を浴びながら人をめった刺しにする瞬間を目撃してしまう。恐怖と驚愕に包まれ、思わず目をそらす重。その出来事が現実だったのかそれとも夢だったのかすら疑う重だったが、玄関をノックする音とともに、現実に引き戻される。そして、ドアの向こうに血の匂いをまとった彼女が現れ放った言葉は重の予想を遥かに超えたものだった――。日常を装う仮面の裏に、隠す「もうひとつの顔」。それぞれの思惑が絡み合い、嘘と罪が織りなす静かな狂気が幕を開ける。
