あらすじ五年前に伯爵家を継いだジルベールは、一四年前に出奔して冒険者となった姉・ディアーナの遺灰と共に訪れた義兄・フェルヴェと共に姉を埋葬した。土の中で永眠している姉よりも彼の方が不憫に思う。私よりも長身で体格の良い義兄であるのに、ふるえている肩を抱き寄せたい衝動に駆られる。それほどまでに、哀愁のにじむ背中は儚く映った。五年前のたった一度、顔を合わせたその時……姉上にだけ向けられていた彼のふとした笑顔を、ずっと私は憶えていた。