「愛しています、エステル。だからもう諦めて」
かつて、ダリエ家は悪魔に憑かれていた。
先祖が悪魔と契約した代償で、ダリエ家に生まれた女子は悪魔の生贄にされる――そう伝えられてきたが、ダリエ家の直系の娘・エステルにとってそれは遠い昔の話で、お伽話のようなものだった。
そんなエステルは、大好きな婚約者・イヴォンとの結婚を控え、まさに幸せの絶頂にいた。
唯一の不安は、大伯母に結婚を反対されていることだ。悪魔の生贄として捧げられかけた大伯母いわく、イヴォンの顔は、ダリエ家に巣食っていた悪魔そのものだという……。
半信半疑のエステルだったが、大伯母から授かった鍵に導かれた先で、本当に悪魔を見つけてしまった。
大伯母の言う通り、悪魔の顔は、最愛のイヴォンにそっくりで――……。