日本文化と柔道の父を敬愛するカンヌ国際映画祭総代表が紡ぐ、情熱の半世記「私の人生には映画の前に柔道があった。それがこの本で私が語りたかったことだ」フランス映画人が慈しむ“自他共栄の哲学” 著者ティエリー・フレモーは、9歳で柔道に出会い、その後、黒帯となり、四段を取得。柔道の指導者になるも、大好きだった映画の世界で働くことになり、柔道から遠ざかる。リュミエール研究所所長、そして「カンヌ映画祭の顔」として世界各地を飛びまわるなか、フランス柔道連盟の「鏡開き」でスピーチをしてくれないかと頼まれたことをきっかけに、柔道が自分の人生においていかに重要な役割を果たしてきたかを再認識する……。 リヨンの道場の畳からカンヌのレッドカーペットへ。まったく違う世界に足を踏み入れた著者の映画人生に、柔道家の経験はどんなふうに生きたのか。大勢が関わる映画産業と、己と向き合い精神修養を重ねる武道は、どのように響き合うのか。 自身の半生を振り返るこの自伝的エッセイでは、柔道の歴史、柔道の精神、嘉納治五郎とその時代、さらには三島由紀夫の切腹の衝撃など、ときに著者は、柔道という枠を超えた近代日本文化論を展開する。一方で、「姿三四郎」をはじめとする黒澤明作品や、溝口健二や是枝裕和といった日本の映画監督について触れるとともに、タランティーノとの交流など、映画人としての興味深いエピソードも満載だ。 柔道を縦糸に、映画を横糸に織りなされる本書は、柔道愛好家の共感を呼び、シネフィルにはたまらない一冊となるだろう。「柔道家・嘉納治五郎の生きざまが生粋の映画人を生み出した」 役所広司日本語版に寄せて ティエリー・フレモー第一章 初めての受第二章 《鏡開き》第三章 嘉納治五郎第四章 スポーツへの情熱第五章 故きを温ねて新しきを知る第六章 生きている実感第七章 講道館第八章 日本における自死第九章 帯第十章 いざ外国へ第十一章 技について第十二章 初めての大会第十三章 柔道着第十四章 揺らぐ王者第十五章 結末はまだ編集していない(幕間休憩)第十六章 ルドン先生第十七章 クラインの冒険第十八章 黒帯第十九章 姿三四郎第二十章 戦う第二十一章 幻のオリンピック第二十二章 師と弟子第二十三章 嘉納治五郎、死す第二十四章 雨に唄えば第二十五章 最後の受エピローグ 嘉納治五郎の言葉謝辞訳者あとがき