あらすじ呉服についての便利屋であり、染色の仲介業者でもある「悉皆屋」の康吉は、職人としての良心に徹することで、自らを芸術家と恃むようになる。大衆の消費生活が拡大する大正モダニズム期には、華美で軽佻な嗜好を嫌い、ニ・ニ六事件の近づく昭和前期には、時代の黒い影を誰よりも逸早く捉える男でもあった。著者が戦時下に書き継ぎ、芸術的良心を守った昭和文学史上の金字塔と評される名作。