「言葉とコミュニケーション」は、哲学の問いであり、「私」の問いである。
美味しさを伝えるには、「言葉が奪われる」とき、言い換えの力、ジェンダーを表す単数のthey…。日常の問いを哲学につなげ、柔らかな言葉で新たな可能性を探る。「紀伊國屋じんぶん大賞2023」第2位に輝いた『言葉の展望台』、『言葉の風景、哲学のレンズ』に続くエッセイ集。
「コミュニケーションについて考えるなかで徐々にわかってきたのは、目の前の相手としっかりと向き合うためには、ときに自分自身で物事を決めるのを中断し、相手に身を委ねる必要があるということだ。私の言っていること、私が発話を通じてしていること、そして会話のなかで現れる私とあなたの関係、そのいずれも、私単独で決めることではなく、私とあなたのあいだで相互的に調整されることであって、だからこそときには自分の意志を引っ込めてあなたのやりかたに合わせることもできる。」(本書より)
【目次】
レンコン団子の美味しさ
言葉が奪われる
「卒煙支援ブース」へようこそ
「生き延びましょう」とあなたに向けて
自分自身を語るために
いま、ここから、私が投げかける言葉
会話の事故
哲学者に語れること
突如、迫りくる
理想的な言語、不完全な言語
あれ、そうだっけ
呼びかける言葉