恋の花咲く、純情爺ぃ!!往古来今・春夏秋冬、男はいつだって初恋なのだ!亡き妻への忠節を誓った昭和男を翻弄する、一途でまっすぐな天女たち。ハラハラ、ドキドキな、古希の恋愛道!?「それじゃ、あのね、わたしの手を握ってください、しっかり、強くよ」えっ!手を握る? 突然のおねだりに、澤村はまごついた。絵里香の上体が、さらに乗り出した。淡いレモン色の夕菅の花を染めたワンピースの胸が、澤村の目には、大きく浮き沈みしたように映ったのだった。この哀れな未亡人の苦しい胸のうちを察したら、手を握るくらいの努力を惜しんではならないぞ。澤村は己に言いきかせた。が、なかなか手が出せない。はっとした。掘り炬燵に半分入っていた腕を、ぎゅっと握られたからだ。(本文第二章より)