ギターがジャズの現代化を図る過程を克明に描く管楽器や鍵盤楽器が主流のジャズにおいて、ギターはどのようにジャズを現代化させてきたか、その過程を克明に描く野心的な論考。1960年代後期以降、ジャズという表現が多様化し指し示す意味が広がる過程において、エレクトリック・ギターはその変化を肯定する楽器として多用されることとなった。本書は「ギターは王道ジャズにおいて傍系の楽器であった」という視点から出発して、他ジャンル語彙も抱えた越境するギタリストがジャズの現代化を図る過程を描くものである。米国ブラック・ミュージック史におけるジャズの再考、マイルス・デイヴィスやオーネット・コールマンら先駆者たちに重用されていく過程、オルガン・ジャズにおける位置付け、ECMレコードによる重用、レディオヘッドからの影響などを通じて、これまでのジャズの正史では語られることのなかった視点で論じる。ギターという楽器を物差しとし、モダン/コンテンポラリー・ジャズの見直しを図りながら、ジャズとR&Bやロックといったポップ・ミュージックが横一線に並ぶ様を描くことを試みたい。CONTENTS第1章 ギターはモダンジャズにおいて傍系の楽器であった第2章 ギターを物差しとする、米国黒人音楽の流れ~ジャズとギターの曲りくねった関係第3章 マイルス・デイヴィス~すべてはやはりこの男から始まった第4章 オーネット・コールマン~ドウシテコウナッタの権化第5章 ジミ・ヘンドリックス~枠を超え創造するというアイコン第6章 懲りない、爆裂ギタリストたち第7章 カサンドラ・ウィルソンをはじめとする、ギターを介するボーダーレス表現第8章 ギターが不可欠となる、オルガン・ジャズの不思議第9章 ブルースやソウルと横つながりの、ジャズ・ギター第10章 ギターにフレンドリーな、ジャズ界中央にいた変わり者第11章 日本人大御所も、ギターに近かった第12章 ギタリストを分け隔てなく起用する、ECMという不可解な回路第13章 現ジャズ界の、人気/重要ギタリストたち第14章 お茶目な狂気。ロックとジャズの境界上にいる個性派第15章 レディオヘッドという黒船~なぜ今のジャズの担い手は惹かれるのか?第16章 拡張する今のジャズとギター表現