本電子書籍は『身の維新』に補論を加えた電子書籍オリジナル『身の維新 完全版』となります。《 内田樹さん(思想家・武道家)推薦!》幕末から明治にかけての医学と政治のかかわりを医師たちの肖像を通じて鳥瞰した力作。フーコーの『狂気の歴史』の方法が日本にも定着したことを実感させる。 * * *〈 幕末の動乱のなか、医師たちはその時々の情勢、自らの信じるもののために闘った 〉[幕府側=漢方][新政府=西洋医学]──そのような単純な対立では語れない。幕末の和方医、漢方医、蘭方医の群像を描く骨太の歴史ノンフィクション。---------日本医学史の書を見ると、江戸時代後期の蘭方医学の歩みに重きを置いて、西洋医学化を「医学の曙」として描いているものが多い。医学の西洋化をゴールとして、それまでの医学が価値づけられがちだった。そのような現代人の価値観を前提にして書かれた歴史は、当時の人々が生きていた歴史からはずいぶん遠いものだろう。 * * * ■「古医道」を確立した権田直助は、倒幕の志士となり、岩倉具視のスパイとなった。 ■浅田宗伯はのちの大正天皇を救ったカリスマ漢方医。明治期も町の人々を無料で治療し続けた。 ■幕臣・蘭学医・松本良順は、戊辰戦争で負傷者を治療。軍医という概念をはじめて持った人。 ■西洋医・相良知安は、新政府でドイツ医学を採用させた立役者。最後は易者として貧民街に生きた。 * * *人の身体について自由に語ることができた時代。和方医、漢方医、蘭方医らの身体観・医療観を賭けた闘いは、もう一つの維新史。---------【目次】序──医師たちの幕末維新第一章・国を治す戦へ 一.古の医道を求めて 二.すべての医薬は皇国から 三.活きている身の理第二章・病める国の医師の憂国 一.医師が国を治すということ 二.治療としての倒幕 三.幕府医官の漢蘭対決 四.薩邸浪士隊、西へ 五.戦のなかの医師たち第三章 維新後の医師の闘い 一.追われゆく医師たち 二.古医道から国語学へ 三.漢方医の生存闘争あとがき参考文献補論 生と理の相克――「身の追求史」補論 序補論 第一章 理のない医学と古――吉益東洞の万病一毒説 一.死生は知らず 二.天下の医を医す志 三.到来する物――荻生徂徠の古文辞学 四.腹中の一毒に発す 五.疾医の技芸 六.人事と造化を混ずるなかれ補論 第二章 失われた医理を求めて 一.医理の空白に――杉田玄白の解剖学 二.一毒の行方――吉益南涯の気血水論 三.古方としての麻酔手術――華岡青洲の内外合一 四.脳と霊液――杉田玄白の神経論補論 第三章 和歌と医学――本居宣長の身の神学 一.宣長の医論 二.歌論と医理の照応 三.悪は善のはじまり補論 第四章 最新医療と神仙の方術――平田篤胤の神医道補論 第五章 古の身の覚え――権田直助の古医道補論 参考文献