FIREの先は薔薇色なのか? 幻影に覆われた現代を巧みに描いた傑作小説外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、生活費を切り詰め株に投資することで、給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑うが、とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。そのアップデートされた物々交換の世界は、マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。自らの価値観と生き方を問われる、いま読まれるべき傑作小説!※この電子書籍は2021年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。