対症療法が中心となる西洋医学の薬と違って、体質改善を図ったり、臓器の機能を高めたりと現代医学とは何から何まで異なる薬、日本の伝統薬。「和漢薬」「売薬」と呼ばれることもあります。一般的には漢方薬の仲間と捉えられているようですが、多くの人は、漢方薬は「中国で生まれた漢方医学で、漢方で用いる薬」と、漠然と思っているのではないでしょうか。実は、漢方薬も和漢薬も同じ意味を表す、日本で生まれた言葉であり、どちらも「日本で日本人向きに作られた薬」のことです。日本の伝統薬は、創薬にまつわる物語に彩られており、そこには当時の社会情勢や人間性がうかがえる面白さがあります。
健康雑誌に掲載され人気を博した、日本の伝統薬製造元30社への取材記事を再編集。知られざる伝統薬の世界、その効能と誕生秘話を紹介する。電子オリジナル作品。
*造り酒屋の発酵技術が生んだ京都の秘薬『ユナルゲン』
*海の資源を豊富に含んだ伝統薬『ヨード剤』
*体の不調なところに働きかける『ヒューマン・プラセンタ・エキス』
*後醍醐天皇が命名!? 日本最古の胃腸薬『三光丸』
*漢方薬で癌患者を延命『WTTC』
*『WTTC』の考案者が創薬、船越の赤袋の名で知られた『弘眞胃腸薬』
*200年の歴史を持つ滋養強壮薬『野中烏犀圓』
*笠間藩の漢方医が考案した処方がルーツ『種村腎臟仙』
*大正13年創業の老舗が日本人向けの薬として開発『順血湯』
*江戸時代から続く専門店が考案、飲む目薬『八ッ目鰻キモの油』
*宋代の処方をもとに創薬した褥瘡の名薬『タイツコウ軟膏』
*毒性を抜いたトリカブトが効果の秘訣、花粉症薬『サンワロンM顆粒』
*戦前は全国No.1の売り上げを誇った名物風邪薬『うどんや風一夜薬』
*ミミズが原料の頓服風邪薬『みみとん』
*江戸時代から続く、のぼせの特効薬『石川松石南の精錠』
*80年のロングセラー、幅広い効能の貼り薬『糾勵根』
*水銀製剤の老舗が開発、飲酒から肝臓を守る『ネオレバルミン錠』
*江戸最古の薬舗が製造した胃腸薬『宝丹』
*水戸黄門の智恵から生まれた婦人薬『赤茂傳』
*江戸時代に開発、300年の歴史がある妙薬『牛王丸』
*徳川家康が軍陣に臨むときに携行した名薬『大人司命丸』
*武家の家伝薬をもとに創薬、攻補兼施の薬『寿王』
*戦前の動脈硬化、高血圧の名薬が便秘薬として再生『乾坤』
*二日酔い防止効果に根強い人気『五苓黄解内服液』
*明治時代から伝わる東海地方のロングセラー風邪薬『橋本七度煎』
*明治時代の人気浄瑠璃にちなんだ目薬『サワイチ目薬V』
*弘法大師の処方がルーツの胃腸薬『良薬大師丸』
*花粉症の目のかゆみが即効的に解消すると評判『百草目薬』
*名医・華岡青洲が考案した軟膏『紫雲膏』『中黄膏』
*道中薬として参詣客が競って購入した名物はら薬『成田山一粒丸』
●東茂由(ひがし・しげよし)
1949年、山口県周防大島生まれ。現代医学から東洋医学、代替療法、民間療法まで長年、医療・医学の分野で幅広く取材・執筆活動を続けてきた。著書に『長生きしたければ朝食は抜きなさい』『いつも元気な人の習慣術』『甲田流健康術』『恐ろしすぎる治療法の世界』など多数。