『源氏物語』の〈戦略〉、それは読者を惹きつけ楽しませるためのものである――。
その〈戦略〉の実態を多数の例をもとに論証していく書。
先行作品をいかに取り込むか。〈反復〉という文学的技法で何を効果的に伝えようとしたのか。
そしてそれに読者は気づくだろうか。多岐にわたる試みを丁寧に解き明かす。
「同時代の様々な読者層を幾重にも惹きつけ、楽しませるものとしてあった文学的〈戦略〉は、その後、時を経てなお、多くの読者に響き続け」る。
【〈引用〉と〈反復〉という『源氏物語』に仕掛けられた文学的技法は、多様な読者の知識・素養のレベルに応じて作用する場合と、レベルに関わらない場合とをあわせもつ、極めて戦略的なものであった。気づかなくとも十分楽しめるが、気づけばもっと面白い─。このようにして同時代の様々な読者層を幾重にも惹きつけ、楽しませるものとしてあった文学的〈戦略〉は、その後、時を経てなお、多くの読者に響き続ける。本書は、そうした『源氏物語』の〈戦略〉の実態を多数の例をもとに論証するものである。】……「序章 『源氏物語』の戦略と読者」より