京浜運河沿いで死体があがった。身元は暴力団員、伊波肇の母親照子。陰部をナイフで抉られ、腹部から腸がはみ出る陰惨な殺しだ。対抗する組の犯行か? 発見現場に臨場した川崎警察署捜査係デカ長の車谷一人(くるまだにひとり)は、軽のバンの荷台から不審な荷物を下ろして走り去ったふたり組の男がいたことを聞きつける。男の一人は足を大きく引きずっていたという。被害者は故郷の沖縄に里帰りし、事件当日午後二時着の飛行機で羽田空港に帰ってきた。だがその後の足跡が不明だった。翌年五月に沖縄は本土返還を控えていたが、照子は、帰郷は「返還されてからでは遅い」と話していたという。足を引きずる有力容疑者を、全力で探す車谷。だが、予想外のところで別の殺人事件が起きた。本土復帰を目前にした沖縄を食い物にしようする者たちの暗躍が明らかになるにつれ、ふたつの殺人事件が絡み合っていく……