「神に愛された天才」vs「人に愛された中年の星」知られざる将棋のタイトル戦を舞台に繰り広げられる、感動の人間ドラマ。恋愛小説の金字塔を立てた著者が開いた、新境地。40歳までタイトルを獲れなかった棋士は、引退まで無冠に終わる――。それが才能と加齢による限界がもたらす、将棋界の残酷な歴史。田中一義は46歳。かつて5度もタイトル挑戦に敗れ、あと一歩で栄冠に届かなかった「悲運の棋士」。それでも諦めずにきた彼に奇跡が微笑み、念願のタイトル挑戦権を手に入れた。だが迎え撃つ相手は「令和の王」――源大河八冠。まだ一度もタイトル戦で敗れたことのない、全盛期の若き天才。それは誰もが絶望する、中年棋士のラストチャンスだった。家族と戦友、元天才の弟子との絆、初恋と、青春の残光……これまでの人生のすべてを星のごとく燃焼させる一義は、神の子に届くのか。熾烈な才能の世界と家族愛をみごとに描いた傑作。