時は江戸。作事奉行・上月監物(こうづきけんもつ)の一人娘は、母が眠る墓所に現れたという、ある男を探していた。彼岸花を深紅に染め付けた着物を纏い、身も凍るほど美しい顔のその青年は、"この世に居るはずのない男"だった――。一方、青年の出現を知った監物は、この騒動が過去の悪事と関りがあるのではと警戒する。いくつもの謎をはらむ幽霊事件を解き明かすべく、"憑き物落とし"を行う武蔵晴明神社の宮守・中禪寺洲齋洲齎が監物の屋敷に招かれる。謎に秘された哀しき真実とは? 歌舞伎の舞台化のために書き下ろされた、長編ミステリ。