ローレンシア王国第八王女のフィリアーナは、生まれた時から精霊に愛されていた。
精霊に愛されるがゆえに、感情が高ぶると周囲を凍らせ雪を降らせてしまうので、ローレンシア王国では不吉な姫として家族や使用人から虐げられ、城内に隠されるようにして過ごしていた。
そんな折、長きに渡り続いた隣国ルビアンツ王国との戦争を終結するための和平の象徴として、フィリアーナがルビアンツ王国の王族へ嫁ぐことになった。ほぼ厄介払いのようなものだったが、フィリアーナはルビアンツ王国でなら幸せになれるかもしれないと淡い希望を持って自国を後にした。
しかし、フィリアーナの結婚相手になる予定だった第二王子にはすでに恋人がおり、フィリアーナと結婚はできないと宣言したのだ。
だが、ルビアンツ王国としても和平のためフィリアーナを送り返すことはできず、唯一未婚の王族である現国王の弟ジェラートとの婚姻を提案してきた。
このまま祖国へ帰れば今まで以上にひどい仕打ちが待っている。そう考えたフィリアーナは、この国で野獣公爵と忌避されているジェラートとの婚姻を受け入れる。一方、ジェラートも最初は渋るものフィリアーナの懇願に負け、妻に迎えることを承諾したのであった。
妻として愛されることを諦めていたフィリアーナだが、ジェラートの屋敷で待っていたのはつらく悲しい日々ではなく、温かく幸せな毎日と彼からの溺愛で……。
これは精霊に愛されながらも不遇な境遇を持つ王女と、戦争を勝利に導きながらも周囲に野獣と呼ばれる公爵の幸せな結婚の物語。